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       秋は稲刈りの時期、人間関係でも実りの対話を勝ち取りたいもの。

 もう60歳だ、70歳だと騒ぎがちですけど、いきなりこの年になったわけではありませんよね。昨日と今日は続いているし、今日と明日も続いているのだから、年齢にはあまりこだわりすぎないことです。
 そして、何かアクシデントが起きたとしても、現実以上に重く受け止めないこと。マイナスの感情は上手に消し去り、いつも新鮮な気持ちで、美しいもの、目新しいものに心を向けることが大切だと思っています。
                             「心の財産の増やし方」森英恵(ファッションデザイナー)の記事から。

出版営業のわたしの日々は、週に3日は都内担当地域の書店に出向くのが通常。そこで繰り広げられる営業トークも早10年になり、年季の入ったモノで思い返すに感慨深いものがある。

 逆に、売り場を任されている担当の書店員さんの事を考えると、連日訪れる出版社の営業売り込みを、どうこなして、その渉外活動から売れ筋をしっかりと掴み、魅力溢れるコーナーにするか、仕込みの実力を問われる厳しい現場仕事だと感じるのである。

 返品・品出し作業やフェアの仕込み・商品の補充発注など、1日中やってもやっても終わらない作業をしているところへ、結構いきなり営業に出向く私たち。だからこそ、出版社の営業訪問は、誰よりも売り場担当の気持ちを汲み、思いやる事が必要最低限の大切なこと。

 わずかな時間でも、聞いてほしい大切な事を端的にまとめ、まずは相手の話を80%聞いてから、自分の話は20%ぐらいに抑えつつ、適切な要望などを吸い上げることができるかどうか。毎月の信頼作りとも言える仕事が、現場での自分の使命だと言い聞かせて訪問する日々だ。

    書店内風景
       書店は検索性の良さと、キャッチ―な品揃えが重要!?

時間の80%で相手の話を聞き出し、様々な情報を得るために必要な条件とは何か?
わたしはこんな風に考えている。

⦿ 相手が考えている時はじっと待つ
⦿ 沈黙を恐れない

この2点を肝に銘じて仕事をさせてもらっている。特に書店という商品アイテムがどんな店よりも圧倒的に多い商売で、担当者の頭の中もアナリスト並みに思考の海の中にある方が多い。話をしている最中にも、別の企画が頭に浮かんでしまい、一瞬思考停止してしまう担当者もいるほどだ。

 そんな時は、ただひたすら待つ。その沈黙に耐えきれずに適当な話を振ったりはしないことだ。相手が別の世界の思考から帰ってくるのを待つだけで、その方との信頼関係は充分に築けるもの。

 これができずに地雷を踏んでしまい出入り禁止を食らってしまう営業マンもいることから、相手の思考や気分の妨げには絶対になってはいけないのだと思っている。

    聞き上手
       耳伝手で得られる一次情報はほんとうに貴重!

 人の話を聞き出す時に、最も重要かもしれない動作の一つに「相づち」がある。何でも聞いてあげ、すぐにそうだそうだと相づちばかり打っていると、反対に信用を無くすよ!とむかし先輩営業マンから指摘を受けた事があった。当時、営業マンを始めたばかりのわたしは、自分の事を覚えてもらいたくて、つい、話のこまごました所で相づちをしていたのだそう。

 「相づちが多い人はだいたい良く分かっていなくて、不安でそうしてるだけなんだ。相づちは少なく、そして長く。ちゃんと相手の話を理解したあとで、大きくうなづいて相手の目を見るんだよ」と、上司に教えて頂いた。それからはその指導通りに、きちんと了解した上で主張を明確な言葉で伝えるようにしたところ、営業の質が格段に上がったことは言うまでもない。

 聞き手の態度如何によって、相手の考えを深い所から引き出せることを教えて頂いた貴重な体験だった。別段、仕事の現場だけでなく、日ごろの人づきあいの場合でも、聞き上手は充分に必要な技だよね。それも、相手を讃えつつ、自分も相手の話に乗って楽しめたら、なんて嬉しい時間になるんだろう!と思うのだ。

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       人間関係も秋空のようにすっきりいきたいね。

 ここまでは「沈黙」「相づち」と、聞き上手になるための技を披露してきたが、最後にもう1点!
それは、「プライベートにあえて踏み込む」というものだ。

 わたしは良く、営業の最後にお礼を言いつつ、気になった事を何か1つ、配慮して吐露するようにしている。若い女性の店長の場合など、「閉店が10時じゃ、帰り道が危険ですね。どうぞお気をつけて!」とか。相手が気にしなくて済むような話しで、それでいて気遣いが感じられる言葉を謙虚に投げかけ、「笑顔」でその場を去るのだ。

 自分の事を多少なりとも気にかけてくれている、という安心感から少しずつだが信頼が培えるもので、ちょっと楽しみな場面でもある。ただし、男性担当の場合はそんな軽いことはせず、ピシっとクローズするようにしているけど。(笑) たまたまプライベートな話で花が咲くような時も、なるべく長くならないように気を付けながら聞かしていただくのだが、決して他言しないことも心がけたいところ。

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                 思いっきり、対話の華を咲かせたい!

 はあ~。それにしても、人と付き合う事ってすごくストレスを感じるよね。それでも、一晩良く寝て新たな1日を始めたら、もう、ちゃっかりワクワク~しているんだもの。やっぱりわたしは、つくづく人が好きなんだよね。本当は自分の話や自分の事はそっちのけで、相手の話に没頭したいもの!
それも・・とびっきりの笑顔でね。

                                     営業トーク